映画「フォード vs フェラーリ」
映画『フォードvsフェラーリ』特別映像「奇跡の大逆転」2020年1月10日(金)公開
※ネタバレがたくさんあるので、見たくない人は注意
概要
- ジェームズ・マンゴールド監督
- 2020年1月10日 公開
- マット・デイモン クリスチャン・ベール主演
どんな映画
1966年。ル・マン24時間耐久レースをもとにした映画。
ル・マンってなんやと思った人は、これを見てくれ。
1963年、フォードは経営戦略に悩んでいた。
ベビーブーム世代の若者に向けて車を売るべく、会社にスタイリッシュなイメージを求めていた。
そのため当時ル・マンで連勝していたフェラーリを買収することで、フォード車にも良いイメージをもっておうとする。
しかし買収交渉は失敗に終わる。
交渉の最後、エンツォ・フェラーリ(フェラーリ創業者)はフォードを馬鹿にする。
それを聞いたヘンリー・フォード2世(フォードCEO)は激怒し、ル・マンにてフェラーリを打ち負かすことを決意し。レースチームを編成することを命じる。
最強のチームを作るべく、ル・マン'59の優勝者でカーデザイナーのキャロル・シェルビー、そしてレーサーのケン・マイルズがフォードの集う。
どんな人が見ると良いか
- 車好きな人
- モノ作りへの情熱とかに感動する人
- 男の意地やロマンに共感できる人
自動車レースが題材なので、車好きには面白い場面が多くでてくる。
運転シーンなどは特に迫力があり、緊張感が伝わってくる。
俺自身は自動車に詳しくないが、好きな人ならより楽しめるだろう。
題材が1966年なので、当時の自動車がたくさん出てくる。本物を使っているのかは分からないが、非常に再現度が高く、自動車好きには感動ポイントの1つになるらしい。
物語の構造的には、「技術と情熱をもって最強の王者に挑戦する」という分かりやすい内容になっている。
「下町ロケット」などとほとんど同じような構造になっているので、そういうのが好きなら見ると良い。私は大好きです。
最後のレースは意地と情熱のぶつかり合い。ロマンあふれる熱い展開が見られるので、とても面白い。
解説と感想
社長も人の子
物語はフォードの経営戦略が難航するところから始まる。
若者に向けてスタイリッシュなイメージが必要だが、今のフォードにはそれが無い。
ならばル・マンで連勝しているフェラーリを買収することで、イメージアップができるのではないか。
折しも、フェラーリ側も資金難から経営状態が悪くなっていた。
交渉は進み、買収直前まで行く。
しかしレースの指揮権や決定権をめぐり、交渉が破綻。
交渉の最後に、フェラーリ創業者エンツォ・フェラーリは
「フォードは醜い車を作る醜い工場へ帰れ。ヘンリフォードも所詮”2世”だな」
と罵っていく。
2世の部分はヘンリー・フォードのプライドに関わる部分。
いよいよ激怒をし、ル・マンでフェラーリを打ち負かすことを決意する。
最終的に歴史的な勝利に終わるルマン´66だが、発端は社長の怒り。
会社についての侮辱も多々あったが、最後の引き金は自分自身への侮蔑の言葉。
執念というのはやはり私的なところから生まれるんだね。
技術を持った偏屈
フェラーリに勝つために最強チームを作るフォード。
まずはル・マン'59で優勝したアメリカ人のキャロル・シェルビー(マック・デイモン)に声をかける。
身体的にレースに出られないシェルビーは、レーサーとしてケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)を仲間に誘う。
ケンは破天荒なところがあり、自身も「フォードと俺は合わない」というが、シェルビーの説得により、フォードのレーサーになる。
ケン・マイルズはエンジニアとしても優秀で、試走を繰り返し、マシンをどんどん改良していく。
しかし次のレースでは、「ケン・マイルズはフォード社のイメージと合わない」というフォード社の意向でレーサーから外される。
シェルビーは反対しながらも、最終的にケンに伝える。
いつの時代もそうだけど、どんなに素晴らしい能力があっても、社会性という別の側面から潰されてしまうんだよね。
天才は理解されないとよく言うが、努力すべきは天才か社会か。しかし理解されるように行動すると、おそらく能力を持て余すのではないか。
これは永遠のテーマだよな。
因みに一つの解として、「天才を理解し、社会とつなげるマネージャーのような人間が間に入る」というものがある。
今回の映画だと、シェルビーやケンの奥さんがその役割になっている。
現場 vs 経営陣
'65のル・マンでケン・マイルズを外す判断もさることながら、フォードの経営陣は現場のことについてちょこちょこと口を出してくる。
’66のル・マンではフォードの優勝が確定したのち、フォードのレース責任者レイ・ビーヴ副社長が「フォード3台で同時にゴールさせれば、歴史的な瞬間になる」と持ち掛けてくる。
ケン・マイルズはすでに1周分、他のフォード車より速く走っている分、他の車と揃えるならば減速しなくてはならない。
大企業を題材にしていると、ありがちと言えばありがち。
「フォード vs フェラーリ」と銘打っているが、実際は「現場 vs 経営陣」なところが多い。
真の敵は経営陣、つまり味方側にいるわけだ。いつの時代も同じだね。
経営陣が視察に来た時に、社長を説得する(脅す)ため、シェルビーが社長を試走車に乗せて爆走するシーンがある。
その後、社長がぼろぼろと泣き出して語るシーンがあるのだが、社長の本音が出ていて個人的に好きなシーンだ。
ケン・マイルズの栄光と決断
ル・マン'66のレースでは最終的にフェラーリが全台リタイヤとなり、フォードが勝利を確実なものにする。
映画だけだと少しわかりにくいが、フォードが勝てたのには2つの要因がある。
- ケン・マイルズらのドライビングテクニック
- フォード車の頑強さ
映画では1番の方が分かるが、ル・マンは24時間耐久レースというだけあり、人間も自動車も頑強さが求められる。
レースの途中で自動車が壊れないというのも勝敗に大きく関わってくる。
実際、最後のフェラーリとの競争ではフェラーリ側がマシントラブルで脱落になっているし。
なのでマシントラブルが無いというのは、ケンのテクニックもさることながら、フォードが高い技術力を持って、挑戦してきたということ。
因みに、フォードも前年はマシントラブルで敗退しているから、その点も含めての進歩を表したかったのかもしれない。
後続と差をつけ、あとはゴールするだけのケン・マイルズ。
しかしそこで副社長からの「フォード3台同時ゴール」の話をシェルビーに聞かされる。
シェルビー自身は副社長に反対していたが、ケン・マイルズには一応伝える。
このあたりがシェルビーの辛いが上手いところで、シェルビーは現場側の人間なので経営陣の内容には反対・抵抗する。が、一応現場の人間には伝えるし、経営陣の要求をのみこんだりする。
この映画が成立するのには、シェルビーの存在が大きいのが分かる。
シェルビーは内容を伝え、最終判断はレーサーであるケン・マイルズに任せる。
ケン・マイルズは経営陣に反抗するかのごとく、ゆっくり走るどころかマシンの性能ギリギリをいき、ラップタイムを更新する走りを見せつける。
そのままゴールするかと思いきや、突如スピードを緩め、他のフォード車に連絡を取り、3台同時ゴールをする。
ここのケン・マイルズの心境は見ていると分かる気がするが、なんとも言葉では表しきれない。実際に見たほうが分かる。
最終的にケンマイルズを先頭に同時ゴールをするが、フォード社のこじつけで、ケンではなく別のドライバーを優勝とする。
怒るシェルビーに呆けるケン・マイルズ。様々な思いを抱えつつ、2人は肩を組んで、次の開発へ向かう。
総評
非常に良い映画だった。
運転シーンの緊張感、人間ドラマ、情熱のどれも良かった。
俺はモンスターパニック大好き人間なのだが、「フォードvsフェラーリ」の自己評価はかなり高い。
最後のケン・マイルズがスピードを緩めるシーンでは、涙が出そうになったので、俺の感動ポイントはそういうところなんだなと改めて分からせてくれた。
自信をもっておすすめできる映画。臨場感が楽しめるから、ぜひ劇場で観よう。