概要
- ジョン・キャロル・リンチ監督
- 2017年 9月29日 公開
- ハリー・ディーン・スタントン主演
どんな映画
神など信じずに生きてきた一匹狼の偏屈老人ラッキーは今年で90歳。目を覚ますとコーヒーを飲んでタバコを吸い、なじみのバーに出かけて常連客たちと無駄話をしながら酒を飲むという毎日を過ごしていた。
そんなある日、ラッキーは突然倒れたことをきっかけに、自らの人生の終わりを意識し始める。彼は自身がこれまでに体験してきたことに思いを巡らせながら、「死」を悟っていく。(wikipediaより)
どんな人が見ると良いか
- 人生の意味がぼんやりしてきている人
- 死ぬのが怖い人
- 忙しい人
「死」をテーマにした映画なので、自分の人生がぼんやりしてきている人は見てみると良い。
人生に意味なんかいらないことを教えてくれる。
テーマのわりに穏やかな雰囲気で進んでいき、悲観的な内容も無いので安らかに見ることができる。
最近、忙しい人はこういう映画を見て、自分の人生を少し見つめなおしてほしい。
あと映画の時間が90分以内なので、単純にすぐ見られる。
解説と感想
「死」をいつ感じるか
90歳のラッキーは毎朝起きて、音楽を聴き、体操をし、コーヒーを飲む。
馴染みの店に行き、とりとめの無い会話をしながらクロスワードを解く。
そんなありふれた日常を送っている。
ある日、いつものようにコーヒーを飲んでいると、何が起きたのか倒れてしまう。
医者に診てもらっても、特に異常はない。むしろ「今の生活を変えたほうが影響が出そうだから、禁煙勧めないよ」と言われるほど。
ラッキーとしては納得しがたいが、医者からは医者の父が昨年死んでいることを聞かされ、自分の年齢のことを考えさせられる。
このシーンがラッキーの転機になる。今まで年齢や健康について無頓着だったラッキーが、自分の死について考え始める。
仏教用語に「生老病死」という人間の避けられない4つの苦しみを示した言葉があるが、ラッキーは老、そして死が自分に近づいていることをここで悟るのだ。
自分の死がゆっくり迫っていることに気が付いたラッキーの日常は少し変わった見え方をする。
今までしていた何気ない会話や日常の風景の中に「死」が潜んでいることに気付くのだ。
遺言書、戦争の昔話、餌として売られるコオロギ。
自分にも訪れるであろう死を思いつつ、ラッキーはある結論にたどり着く。
私も病気になって思ったが、普段から病気や死について考える人は少ない。自分にその機会があり得ると実感して、初めて考え始める。
ラッキーの年齢は90歳。平均寿命からしたら、いつ亡くなってもおかしくはない。しかし健康的で体には全く問題ない。
この映画の絶妙なところは、死が急速に迫ってこないが、確実に訪れることを感じさせるところだ。
緩やかな時間
この映画は全編通してBGMは殆どなく、静かに流れていく。街も人もトラブルなく、やわらかい日常生活が送られている。
ラッキー自身は老人らしい、少しぎくしゃくとした動きをして穏やかに過ごしている。
この絶妙な間が自分の死や人生について緩やかに考えさせてくれる。
これが東京のような都市の中心であったら、なかなかっこの気持ちにはなれない。
この静けさが、自分の人生を見つめなおすのにかえって良いBGMになっている。
総評
穏やかでとても良い映画だった。
「死」という重いテーマを、ラッキーという人物を通して、緩やかに考えることができた。
自分も死ぬときはこれくらいの心持ちでいたいものだ。