最近オンライン授業が話題になっているのが、以前やっていた授業はオンラインでもできそうなので知見の共有として書いておく。
学校の現状
勤務校は東京にあるので非常事態宣言を受けて、4月も休校している。
うちの自治体は東京の中でも決定が速かったと思われ、4月1日にはほぼ正式に決定していた。
個人的には異動したてであったので、予想していたとはいえ、なかなか慣れるのにも対応にも辛いものがあった。
始業式と入学式は行い、児童に教科書とドリル教材などを渡して、後はおうちで頑張ってねという形になった。
最初は登校日の設定などあったが、事態が進むにつれて、結局それも無くなってしまった。
教員も最初はローテーションで勤務の予定だったが、全員在宅勤務の命令が変更になり、今もその状況である。
在宅勤務が始まった当初は教材研究をするくらいで正直仕事らしいことは何もできなかったが、1週間くらいしたらテレワークのシステムが出来上がったので、今は前より少し仕事らしいことができている。
首都圏に関しては、今は多くの学校がこのような感じだと思う。
ただ休校にもならず、休校になっても職員は出勤という学校も聞いているので、うちの学校は良い方なのかなとも思っている。
オンライン授業しないのは怠慢か?
大人はこんな感じだが、子供の方はどうなっているかと言えば、宿題の説明のための動画を撮ったり、お手紙をホームページに上げたりしたが、それきりである。そもそも在宅勤務で何もできない。
外国の状況を見てみると、オンライン授業とかでちゃんと学習を進めている国もあり、流石だなとも思う。
しかしスムーズに導入されているところもあれば、下の記事を見るとそうでもないところもあるようだ。とはいえ、悲鳴は上げつつもオンライン授業は導入されているわけで、ちゃんと参考にしたほうがいい。
では日本ではどうかと言われると、オンライン授業をやっている所は圧倒的に少数だろう。
一部では「日本でもオンライン授業を早く導入しろ」「外国に比べて遅れている」「子供が来なくて教員は暇なんだから働け」という論調もあったりするが、吉野から見てみると、やってもいいならやるよといった感じだ。
これは吉野が情報系が得意なので少し強気に出られるが、気になるのはオンライン授業をやりますと言った時に日本では家庭がちゃんと対応できるかだ。
個人的な予想では、上の記事のように慌てるものの8割くらいの家庭では対応できると予想している。
しかし公教育の難しいところは残りの2割をどうするかということになる。
機器がありません。設定ができません。そうですか。それならば残念ですが諦めてくださいとはいかない。
そういう対応を考えると、オンライン授業のハードルが少しずつ上がってしまう。
因みに今回の事態で何もできないことに対して、情報機器を使った対応を教員がやってこなかったツケのように言われることがあるが、学校に機器を配備する予算を渡さなかったのは行政の問題である。
じゃあBYODは?となると、例えば貧困家庭に対して、授業で使うから情報機器を準備しておいてねというのは、高額な物なので学校からの要求基準を超えていると思われる。そこらへんで公立と私立の違いが出てくる。
よくチョークと黒板の昭和から変わらない教育と揶揄されるが、変わらない状況を招いたのは教員だけのせいではないと思う。
因みに現状の学校で使う物品の中で、家庭が負担する最も高額な物はおそらくランドセルだろう。
それでもせいぜい5~6万円。しかも6年間、毎日使うことが保障されているされている物だ。
BYODで行くということは、現状で言うならランドセルと同レベルで情報機器を使えということだ。
個人的にはできるけど、全国的には厳しくない?
革命兵器「chrome book」
いつまでも昭和の授業をやっているかと言うと実はそうでもない。
学習指導要領も改訂されるたびに新しい教育技術が生み出されるし、情報機器に関しても昔よりはちゃんと配備されている。
その最たる例として、以前に吉野がいた自治体では数年前にchrome bookが導入された。
最近では地上波、Youtube問わず広告がよく出てくるので知名度も上がったのではないか。
単に新しいパソコンが導入されたというのとは少し違う。
chrome bookは今までのパソコンとはちょっと思想が異なるからだ。
簡単に言えば、「オンライン上で何でもやりましょう」ということ。
細かい説明は省くが、chrome bookはオンライン上でデータを操作することが前提にしている。
そのため『情報共有』の点で今までのパソコンよりも圧倒的に優れているのだ。すぐシェアしちゃう。
現在、導入を考えている自治体も多いようで、そう考えると前の自治体は珍しく先見の明があったなと思う。でも多分、決め手は価格。
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chrome bookをどう使う?
chrome bookは教員全員と、児童用に40台配備された。
唐突に配備されたので、最初はどう使うか悩んだが、総合などの調べ学習で検索マシンとして使うことが一番使いやすいことに気が付いた。
今までの調べ学習は遠いパソコン室へ行ったり、全然立ち上がらないパソコンを眺めなくてはいけなかったり、検索ページに規制がかけられたりと色々な制約があった。
それがクラスで30秒以内に検索に入れるようになるのだから、それはそれは楽である。
でもそれはchrome bookじゃなくてもいいんだよね。
chrome bookの最大の強みは情報共有。
Gsuiteを用いた授業をしなくては強みを生かせていないことになる。
そのため実際にドキュメントとかスプレッドシートを活用した授業をやってみた。
これは共同編集できるワードとかエクセルだと思ってもらえればいい。
やったらどうなった?
実際にこれらを使って授業をしてみた。
結論から言えば、クラスから会話が無くなった。
悪い意味ではなく、全てのコミュニケーションをオンライン上で行っている。
なので授業中は図書館張りの静けさ。通常の授業から考えると気持ち悪いくらい静か。
教師もオンライン上に課題を出すので、殆ど話さない。
冒頭の1、2分説明し、残りはせいぜい「新しい課題を出したよ」くらい。
45分間ほぼ話さないにも関わらず、児童の学びは凄まじい勢いで深まっていく。
今まで意見の共有というと、個人が挙手をして全体で発言したり、グループの中で話し合ったりというのが一般的であった。
しかしchrome bookだと全員の意見が、全員にすぐに共有される。
圧倒的な情報量に増えた分、今までよりも学びが深まっていくわけだ。
ただこの授業スタイルは、今の教師には受け入れがたいだろうなとも思った。
アナログ派の先輩曰く、「やっていることの凄さも分かる。効果が圧倒的にあるのも理解できるけど、この状況に俺が耐えられない気がする」と言っていた。
それくらい今までの授業からすると異質な風景であった。
では実際にどんな授業をやったか簡単にまとめてみる。
ドキュメントを使った国語の授業
ドキュメント(ワードのようなもの)を使った国語の授業。
ドキュメントに物語の本文が書いてあるので、自分が気になった文や何かを考えた部分にコメントをつけていく。
そのコメントにさらに思ったことや自分なりの答えなどを返信する。
実際には「この場面ではなんで○○なんだろうね?」→「△△なんじゃない?」→「××だからだ。○○見ると分かるよ」のようなコメントの流れになる。
リアルだと、黒板の模造紙(本文)を貼り、児童が思ったことを発表して先生が書いていくアレに近い。
しかしオンラインだと文章のあらゆる所で40人近くが思ったことをどんどん書いていくので、恐ろしい情報量になる。
こういう授業をリアルのグループでやると、学級として成熟していないとふざける雰囲気になったりするが、それもほぼ無い。
時折、変なコメントを書いたりする子もいるのだが、リアルと違って関わらなくていいのでスルーされていく。
これもある意味オンラインの良さかなと思った。
スプレッドシートを使った道徳や社会の授業
スプレッドシート(エクセルのようなもの)を活用した道徳や社会の授業。
子供の名前が縦にばーっと並んでいて、その隣のセルが自分の意見を書くためのワークシートになる。
道徳とか社会とか、1つ発問してそこに自分のセルに意見を書いていく。
例えば「○○について、あなたはどう思いますか」という発問に対して、全員が自分のセル(ワークシート)に思い思い書いていく。
皆で同時に書いているから、他の人の意見を見ることができる。
答えが考えつかない子は優秀な子を参考にしたり、書き終わった子は他の子の意見を見て、自分の意見に付け加えたり、考えを修正したりしていた。
あとは「○○の資料で分かったことを書きましょう」みたいなタイプは、皆でがーっといっぺんに書いていく。別にかぶってもいいし、とにかく書いていく。
今までは一人ずつ指名して教師が書いてとやっていたところが、一気に共有できる。早い。
提出したら
国語の授業で意見文などの文章を書いたりすることがある。
このタイプの授業は、「書き方のポイントを指導→下書き→先生の直し→清書」というのがよくある流れだ。
この授業もchrome bookでやってみたが、これは非常に楽になる。
書き方のポイントはある程度指導する。
当時はリアルの教室なので、見本文を渡してそれに沿って話をした。
あとは内容の構成を整えられるようにしてから、ドキュメントにいきなり書かせる。
パソコン上なので下書きという作業がいらない。間違えたら、その場で直す。
このタイプの授業は、文章を書けない子も出てくる。
なので、あらかじめクラス掲示板(google classroom)に全員分の文章(これは児童が編集していると随時更新される)をアップロードしておき、書き終わった子の文章を見本に書いていく。
そして書き終わった子から教師に提出する。
教師は提出されたものを確認して、コメントと点数をつけて返却する。
100点満点の文章でも改善点はコメントで教えるので、本人が納得するまで文章を訂正し再提出する。
〆切の時に提出されたものが 、最終的な点数になる。
単元の最初は書き方のポイントの説明などで多少話していた。
しかし後半は、子供の「先生、提出しましたー」と教師の「○○さん、返却しましたー」しか話さない状況になってくる。
本当に教室にいる意味が無い。
オンライン授業できないの?
今、紹介した授業はどれも教室で行っていたが、教室でやる意味は全くない。授業中、誰も話さないもん。
chrome bookを使ったが、googleアカウントさえ持っていればGsuiteは使えるので、家のPCとかでもネットワークに繋がればできる。
なので「オンライン授業できないのか?」という問いに対する答えはこうだ。
やろうと思えば、割とすぐにできる。
問題は、教員全体がこのレベルには遥かに達していないことと、前述した通り「オンラインで授業やるからアカウントを用意して、設定しておいてね」って言っても、分からずに困る家庭が出てくることだ。
オンライン授業の難しさはそこらへんにもある。