私は忘れ物指導をしません
— かよ🌠新任小学校教師👧 (@kayoka_yo) 2020年4月26日
学習で使いそうなものは全て教室に置きます
それは私の経験からです
忘れ物に厳しい先生だった時、毎日が恐怖で焦ってしまい、逆に忘れ物が増え、学校に行きたくないと思いました
その次の担任は全て貸してくれる人でした。先生のためにも忘れ物を、しないと思えました
話題の始まりはここから。
「忘れ物の指導をしない」ことに対して、多くの教員が「いい考えだね」とか「それはどうなの」という意見を色々と言っている。
忘れ物指導に関しては教員の悩みのタネの一つでもあるから、様々な意見があるのだと思う。
厳しく指導してみる?
忘れ物をした児童に対して、厳しく指導する場合も往々にして見られる。
かく言う私も若手の頃はそのような指導をした覚えがあり、恥ずかしい限りである。
厳しく指導をしてもあまり意味は無い。経験的に忘れてしまう子はいくら言っても忘れる。
上のツイートでもある通り、逆に「今日は忘れ物していないかな?」と強迫観念に駆られてしまったり、「忘れても怖いから言い出せない。」という事態に陥るケースが容易に想像できる。
第一、指導しているこっちもイライラしてしまう。
「これだけ言っているのに、なぜ忘れるんだ!」という思考になる。
因みに「これだけ言っても」と書いているが、概ねこのような場合に多いのが「忘れたこと自体」を叱って、「次は忘れるなよ」で終わるケースだ。
これは次に忘れない手立てが話されておらず生産性が無いので、残念ながら指導とは言えない。
厳しく指導することは「忘れ物指導あるある」だが、児童・教師共にメリットが少なく効果も薄いだろう。双方可哀そうだ。
厳しくならなくてはいけない時
ただし個人的に忘れ物指導の中で厳しく叱る場面もある。
それはこちらが十分に指導した後に、なおかつ改善が見られない場合である。
つまり何回か「こうしたらいいんじゃない?」など児童と合意を得ているにも関わず、全く直す気配が見られない時である。
これは忘れ物の問題ではなく、信頼関係の問題である。
そのため児童にも「これ以上忘れ物を続けるのであれば、それは信頼関係の裏切りである」という旨を伝える。
これは忘れ物に限らず行う指導であるが、基本的に児童が「やります。できます。」と言ったら教師は(表面上は)無償の信頼を寄せる。
しかしそれが実行されないのであれば、当然信頼は落ちていく。
信頼はするが、信頼を失う実感もさせなければ、「やります」とその場しのぎに言う人になってしまう。それは教育上良くない。
「やります」詐欺になっている児童には、「あなたが言うことは毎回守られないので、全く信用していないが、どうする?」という旨をハッキリ告げている。
よっぽどのことが無ければ、この指導のどこかの流れで持ってくるので、「持ってこられて良かったね。先生も嬉しいよ」という感じのアイメッセージを伝えるようにする。
忘れないのは無理
「忘れる」という行為は生きていく上で大切なことだ。
全て覚えていたら、頭がパンクしてしまう。そもそも大人だって忘れるじゃないか。
なので、忘れ物に対する吉野の基本的なスタンスはこれだ。
忘れ物に関して子供に伝えるのは
— よしの とおる (@tohruyoshino) 2020年4月26日
1度目は事故
2度目は不注意
3度目はシステムに欠陥がある
ということ。
同じ失敗を3回繰り返す子は、準備の方法だったり、伝達の仕方だったり、何らかの忘れ物しやすい生活リズムが隠れている可能性が高い。
繰り返す子には、その意味でも指導が必要。
これは何かのマネジメントの本で見た内容を忘れ物に応用した話だ。
部下の失敗を上司はどう評価すべきという話だった気がする。
まず1度目の失敗(忘れ物)は事故だ。
これは防ぎようが無い。誰にでもうっかりがある。
本当に大切なものは細心の注意を払うだろうが、それでも忘れる時は忘れる。
なので1度目の忘れ物は何も言わない。
特に普段忘れ物をしない子だと、それだけでショックを受けている可能性があるので、「残念だったねー。仕方ないねー。」など共感して、代替手段を相談する。
ただ事故であっても、なぜ事故が起きたか(忘れたか)はヒアリングする。
本人がその原因を自覚していないと、再度同じ事故が起きるからだ。
1度目はそれで終わり。
しかし2度目は本人の不注意である。
この場合の2度目は期間や種類共に近い場合に限る。
1学期に1回、2学期に1回などであったら、どちらも1度目カウントになる。
逆に期間が空いても、「それ、前も同じ忘れ方しなかった?」と言われるケースは2回目になる。
前回、同じ失敗をし、忘れた原因のヒアリングも行っているので、その状況下で忘れることは本人の改善の意識が低い可能性が高い。
厳しくは言わないが、前回の失敗がなぜ生かされなかったか関してはある程度追及する。
「忘れてしまうのは仕方無いにしろ、それは前回の失敗を学んでいないんじゃない?」という反省を促す。
後は代替手段を相談して終わり。
3回以上は何らかのシステムに欠陥がある。
私が読んだ元の記事には、「3回目は上司のマネジメントの失敗だぜ」と書かれていた。
学校の場合は対象が子供なのですぐに教員のせいではないと思うが、いずれにしろ同じ失敗を繰り返す、何らかの要因が隠れているのは間違いない。
忘れ物をするにも家庭環境などの外的な要因と本人の特性などの内的な要因、それらが組み合わさった複合要因などがある。
一番よくあるのが、翌日の準備が習慣化されていない場合だ。
特に低学年の場合は90%くらいこれが該当する。
例えば低学年の場合、明日の準備までの流れには
- 連絡帳を書く
- 先生が連絡帳を確認する
- (帰宅する)
- 連絡帳を開いて確認する
- 明日の準備をする
- おうちの人が確認する
- (翌朝)
- 忘れずに持ってくる
という大まかなステップがある。
忘れ物が発生するのは4、5、6のどこかのステップが機能していない。
よく忘れ物をする子にヒアリングすると、いつ準備をしたか考えだすケースがある。
これは先ほどの4、5のステップが機能していないケースだ。
逆にあまり忘れ物をしない子は、「寝る前」とか「家に帰ったら」とか、どこかしら決まった時間をすぐに答えることが多い。
そのため忘れ物が多い指導には、これらが習慣的に機能しているか確認する必要がある。
家庭の中の話なので、もちろん保護者にも協力を仰ぐ。
調べたら教員採用試験の場面指導対策が出てきた。
細かい点は他にもあるけど、チェックする点はこれを参考にすると良いかもしれない。
内的要因と対処法
外的要因の場合は、親の協力を得たり本人の意識を変えたりすることで少しずつ良くなる。
ただ内的要因の場合は少し大変。しかも頻繁に忘れる子はこっちが原因の方が多い。
顕著な例にだと、ADHDが一番分かりやすい。特性上、漏れや抜けが多くなってしまう。
合理的配慮の点からも、特性上忘れてしまう場合は本人を叱っても仕方がない。
ADHDの子に「忘れ物をしないように気を付けろ」と言うのは、背が低い子に「もっと高くなれよ」というくらい、暴力的な言葉になっていまう。
この記事にも少し書いてあるが、特に小さい子供の場合は認知特性の問題が大きく関わってくる。
単純に物の量に対して、管理能力が追い付かないというケースも多い。
認知が大きな要因で忘れ物していると思われる場合は、本人の頑張りではどうにもならないので、早々に仕組み化などの対処方法の指導に移る。
ここでやたらと本人の意識改革をさせようとすると、「私はいくら言われても忘れ物してしまうダメな奴だ」という2次障害になりかねない。
ADHDとか特性の問題もあるから忘れ物はある程度仕方ないとは思うが、君の管理能力は現段階でヤベーよと、自覚させて改善の意識をもたせるのも必要。叱るわけではないけど、指導はしなくちゃいけない。
— よしの とおる (@tohruyoshino) 2020年4月26日
あとは人間、何かしら忘れることはあるわけだから、その対処法も覚えてもらわないといけない。
忘れ物をしないために意識改革はしてもらう。
しかしそれは本人の努力してもらうということでなく、自分の特性と現状を理解してもらうということだ。
特性上、自分は忘れ物をしやすいらしい。これは仕方ないし、別に悪くない。
しかし忘れ物をすると困るなぁ。どうしよう。
このような内容を児童が抱き始めるので、忘れない仕組みを作るのと忘れた時にどうするか対処法を指導して学んでもらう。
「先生、忘れました」
よくあるのが「先生、〇〇忘れました」とだけ言いに来るパターン。これだけ言われると俺は「そうか、残念だねー」としか返さない。
— よしの とおる (@tohruyoshino) 2020年4月26日
大体、学んでくると「先生、〇〇忘れてしまったので、△△していいですか?」と言うようになる。そこまでいけば忘れ物指導としてはある程度終わりかなと思っている。
先々を考えると、大人になっても忘れることはあるのだから、その対処法を学んでもらわないと困る。
そのため常々言っているのが、「忘れるのは仕方ないから、忘れたら報告して」ということ。
子供には最初から「忘れ物をするな」ではなく、「忘れ物したら早くに正直に言いに来なさい。怒らないから」と伝えている。
児童は忘れ物を失敗だと捉えるので、まぁ失敗なんだけど、基本的に報告してもらうために「怒らない」ことは強調しておく。むしろ忘れ物を報告しなかった場合に、「報告しようね」と指導する。
先程までの流れを読んでもらうと分かる通り、怒るポイントって無いんだよね。
吉野としては、忘れ物に対して何らかの対処法を身に着けてもらうのがゴールだと思っているので、忘れ物指導はその点に注力する。
そうすると子供は割と素直なので、「先生、○○を忘れてしまいました。」と報告に来る。
この時は「ちゃんと報告に来たなー。いいぞー」とか言ってから、「残念だったね」など言って会話を終わらせる。
高学年くらいで察しの良い子は、「△△していいですか。」と対処法を話してくる。
小さい子などには「で、どうする?」と聞いて、対処法を促す。
その場で対処法が出れば良し、出なければ「▢▢な方法があるから、今日はそうしよう。次回はちゃんとどうするかも考えてごらん」と指導する。
時折、「どうしたらいいですか?」と聞いてくる子もいるが、それでも構わない。
社会に出たら上長の指示を仰ぐのは基本だしね。
後は前述の回数に応じた忘れ物指導しておしまい。
こうやっていると、2学期くらいには「先生、○○を忘れてしまいました。すいません。△△していですか(or△△します)」といった感じで報告ができるようになる。
ここまで行くと、全体的な忘れ物指導は必要が無くなってくる。
一応、クラスには筆箱とかノート代わりのプリントとかを用意している。
指導のまとめ
忘れ物指導はついつい怒りがちになるが、あんまりメリットは無い。
大切なのは忘れ物指導のゴールがどこかちゃんと考えておくこと。
ただ細かい部分では家庭との連携が必要になるので、特に低学年では保護者にもスタンスを話して協力を求めていく。
そういう時に保護者がしっかりしていないと、大体改善されないんだけど、まぁそれは家庭の問題なので仕方ないね。
ここにも書いてあるんだけど、罰則をつけてもまるで意味が無い。
なんなら、いじめDVDとかには忘れ物が多い子がいじめられる事例とかあるくらいだから、餌を与えているようなもの。
忘れ物は個人(と家庭)の問題。
今日はこれくらいで。