さるゲーは新規性が何も無い退屈な本だった

嘘です。タイトルは釣りです。とても面白かったです。

 

私はさる先生の話をZOOMやらクラブハウスやら色々なところで聞いていた。

「さるゲー」はそれらの話をまとめた内容だったので、その意味で私にとっては新規性は少なかった。だってさる先生が今までちょこちょこと話してたし。

ただ私にとってはそうだが、これからの教育を考える上で大切な1冊になると確信している。

 

この先はさるゲーを読んで、思ったことをつらつらと書いていこう。

 

「観のアップデート」はこれからの時代の必須スキル

さるゲーの1番の主張は「様々な観をアップデートせよ」ということだ。

この点に関しては私も賛成だ。

 

では今まで教員が或いは教育がアップデートしていなかったかといえば、そんなことはない。

よく「昭和から変わらない教育」と言われるが、昭和の頃と比べたらかなりの内容が変わっている。

 

例えば生活科や総合、外国語といった新しい教科は導入されたし、学習指導要領が変わるたびに指導法も変化している。

その意味では今の教育を昭和と変わらないかと言うのは、現在の教育を知らなすぎる

 

しかしそれらのアップデートはver.4.1がver4.2になるような、小規模なアップデートだ。

今回はいよいよver4.0からver5.0になるように根本的な変化が起きようとしている

我々はその変化に対応しないといけない。

 

ちなみに時代のアップデートに失敗した例が、先日の森元総理の発言だろう。

現代の感覚と離れているから、あの発言が出てしまう。

でも80歳になった時、自分も時代に合わせてアップデートできているかは自信がないけどね。

 

そういえばうちの校長や副校長が、以前吉野の授業を見にきた。

タブレットの活用を提示する意味もあったので、結構アクロバットな授業をしたが、好意的な感想をもってくれた。

むしろ「吉野さんの授業を見て、我々の授業観も変えていかなくちゃいけないよね」とまで言ってくれた。

 

やはり「観のアップデート」はこれからの時代の必須事項だろう。

あと「筋のアップデート」も必須スキルっぽい(らいざ氏曰く)

 

「投資」は1番簡単な自分への投資

本の中では「投資をすることで経済観を獲得しよう」という話が出ていた。

投資は経済を考える上で1番簡単な学習方法だ。これは間違いない。

 

吉野は数年前から投資をしている。現在は積み立てNISAをはじめ、インデックス投資をしている。

 

投資を始める前だが現実のお金をかけるのが怖かったので、トレダビというアプリからスタートした。

いざスタートしてみると思ったのが、どの株を買えば良いんだ?ということ。

 

ゲームとはいえ現実の練習だから、やるからには得をしたい。

そしたら値上がりする株を買えば良いのだが、じゃあどの株が値上がりするのか。

有名な大企業かなとも思ったが、別に有名だから株が値上がりしているわけではない。

じゃあ値上がりってなんでするんだ?

株を一つ買うだけでも自分が経済について何も知らないことを思い知らされた

 

そんなわけで本を買ったり、ネットで調べたりして投資を始める。

そのため日経平均株価を確認することになるが、株価の変動理由が分からない。

調べると経済的理由もあるが、株価の変動は政治的な理由も大きい。

となると政治のチェックもしないといけない

 

投資を始めると経済・政治など日頃のニュースを追いかける習慣がつく。

しかも自分の金をかけている分ちゃんと真剣になれる。

だから経済観をアップデートするのに投資は1番手っ取り早い

 

「優れ力」をいかに伸ばすか

今までは知識技能を中心とする「優れ力」を伸ばす教育が行われてきたが、これからの時代は「異なり力」に大切になる。

「優れ力」で勝負することはこの先難しいから、知識技能はさっさと身につけたほうが良い。

 

まさしくその通りなのだが、個人的に悩みどころがある。

それは最低限の「優れ力」、つまり知識技能をいかに定着させるかという点である。

 

知識技能をさっさと身につけて、思考力に全振りするってそんなに新しい考えではないと思うんだよね。

「ふわりと8割くらいの知識を長期的に脳内に残留させること」が、現時点で難しいような気がしている。知識のフックをかけたいけど、フックが壊れてるんじゃね。

 

思考に全振りできない原因として、最低限の知識技能が身に付いていないということがある気がする。

逆説的だが、思考に全振りしたければ最低限の知識技能を習得させる技術を教員がもたないといけない。

 

「異なり力」は横井軍平に学ぶ

昔、売れるゲームについて話した時に、ポケモンは「収集」と「対戦(育成)」の2つの要素があったから人気になったんだろうなと思った。

既存のもの同士でもかけ算をすると新しい物が生まれることは結構よくあること。

 

「優れ力」は足し算だからレッドオーシャンになりやすい。

でも「異なり力」はかけ算だから、他と競合しにくくなる。

この場合のかけ算の順序はどちらからかけても良いと思います(炎上回避用)

 

ゲーム業界で「優れ力」を追求しているのがソニーではないか。

とにかくグラフィックとか技術重視の方向へ向く。

確かに新しい技術とかはすごいと思うけど、ユーザーがそれを望んでいるかというとちょっと怪しい。PS4からPS5は確かに進化しているけど、多くのユーザーからしたら正直誤差の範囲ではないか。

 

その点、任天堂はわりと「異なり力」方面の開発をしている。

技術もあるけど前面に押し出している感じではない。

リングフィットアドベンチャーとか「異なり力」の結晶でしょ。

 

利益とかはソニーの方が良かった点もあるが、ソフトを見ているといつも息切れ感がするのがソニーの方。

「優れ力」で勝負するって多分しんどいんだろうなと思う

 

ゲーム話の最後になるが、横井軍平の言葉に「枯れた技術の水平思考」がある。

これは既存の技術を使って既存のものとは別の使い方をすること 。

枯れた技術を使う必要があるかは分からないが、水平思考が問われることは間違いない。

さるゲーでも水平読書の話が出ていたが、”水平”というのは一つのキーワードになるだろう

 

クラウチングスタートは「異なり力」か?

さるゲーの中で一つだけ納得できないのはクラウチングスタートの件である。

「過去の成功の延長線上に答えが続いている訳ではなく、それを否定して異なる方法を模索した結果のイノベーション」というものは確かにあるし、これから子供たちの芽を摘まないために必要な視点だ。

でもクラウチングスタートの例はそのイノベーションに当てはまるかは疑問が残る。

 

さるゲーでも取り上げらている広告の写真を見ると、他の選手はスタンディングだが全員腰を曲げて、やや前傾姿勢になっている。

経験的に分かると思うが、スタートダッシュしようと思ったら体は前傾姿勢になり、低姿勢化していく

どんどん低姿勢になっていけば、いずれは体が支えきれない。そしたら手を着いて支えたらよいのではないかと考える。

つまりクラウチングスタートは究極の低姿勢化の中で生まれた形なのではないか。

個人的にはこれを「優れ力の極致」と呼んでいる。

 

現状を否定して生まれたイノベーションというより、現状を収斂していった先に生まれた「異なり」という方が正しいような気がする。

「手で支えよう」という発想が現状を否定していると解釈すると、結局同じにはなるが。

 

イノベーションの多くは現状と異なる方法を模索することだが、個人的には現状を凝縮した先にもある種の「異なり」が生まれると思う

 

カムバック 寺子屋スタイル

教員になった頃から憧れていたのが、寺子屋のあの絵である。

吉野はそのまま”寺子屋スタイル”と呼んでいたが、子供が好きに学んで、何か分からないことがあったりすると先生のところにやってくる、あの形である。

 

さるゲーでも紹介されていたように、寺子屋スタイルは自然な学びであり、我々は今からそこへ回帰しなければいけないだろう。

寺子屋の第一歩として…とりあえず机と椅子をやめて、ローテーブルにする(笑)?