システマティックな学級目標なので、とりあえずアップデートする

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学級目標は往々にして形骸化する。なぜなら運用する気が無いからだ

そんな形骸化する学級目標に嫌気がさしたので、思いっきりシステマティックにしたのが上の記事である。

 

結論から言うと、この実践は非常に上手くいっていて、吉野学級の学級目標は日々バリバリに運用されている。運用していく上で、上の記事と実際には異なる点や新たな課題面も見つかったので、今回はその点について追記していく。

 

学級目標の運用の仕方

学級目標の運用の流れは以下の通りである。

  1. どんなクラスにしたいか、抽象的な目標(中目標)を集める
  2. 中目標を実現するための行動レベルの目標(小目標)を集めて、マンダラチャートにする。
  3. 中目標に関する評価のアンケートをとり、レーダーチャートにする。
  4. 日直が、小目標をもとに今日の目標を決め、朝の会で発表する。
  5. 帰りの会で今日の目標の振り返りをし、今日の評価をする。達成できていたら、マンダラチャートの該当部分にシールを貼る。
  6. 4と5を毎日繰り返しつつ、月の始めに3の評価アンケートをする。
  7. 4~6を繰り返す。

実際と違ったところ

前回も少し書いたが、1と2の段階についてはほぼ同時に行った。子供たちにとって、抽象的な目標と行動レベルの目標を分別するのが難しかったからだ。

実際には「良いクラスってどんなクラス?」と聞き、思いつく案を付箋に書かせて集めた。手法としてはKJ法になる

KJ法のやり方とコツ|アイデアをまとめる手順をわかりやすく解説 - Web活用術。

 

最終的にマンダラチャートにできれば良いので、このあたりは明確に手法に拘らなくてもよかった。

 

子供の様子

課題の設定

日直が毎日の目標を決めるため、学級目標への意識はかなり高い。マンダラチャートを拡大掲示したものを教室の後ろに貼ってあるので、それを見ながら毎日の目標を考えている。

 

長期的な目標としてはマンダラチャートの小目標に全てシールが貼れれば達成となる。そのため基本的にシールが1回貼られれば、その小目標は今後毎日目標として設定する必要な無くなる。

しかし実際には同じ小目標が再び設定されることは多い。というのも、子供たちはクラスの課題を肌感覚で理解しているため、シールを全て貼ることよりクラスの現状に合った目標を選ぶことを優先している

単にゲームのようにシールを貼ってクリアしていくというより、現実的に課題に向き合っているようだ。

 

毎日学級で生活していると、時にはダレてきて先生からお説教をされる時がある。大体、忘れ物が多い時や集中力に欠ける時などがそれにあたる。お説教をされた翌日は大体、お説教の内容を克服する目標が設定される。

単純ではあるが、子供なりにちゃんと課題感をもって生活ができている。

 

クラスを見つめ、クラスへ戻す

前述のように日々、運用していくとクラスの実態と課題感が明らかになるため、振り返りの機会が多くなる。

先程のように明確な課題がある時は、それに沿った目標が設定される。ただ特に喫緊の課題が無い時も往々にしてある。そういう時はレーダーチャートや拡大掲示のシールの数を参考にしているようだ

 

日直は前日の帰りに目標を決めていくが、「ウチのクラスは”学習”の部分がちょっと低いよね」「”自主性”の部分のシールが少なくない?」といった話し合いがされている。子供たちは日々クラスの実態を把握することができる。

また毎日の目標は短冊で後ろに掲示されているが、連続で目標を達成できている時もあれば、1週間くらい目標を達成できていない時もある。それを見て「最近、目標を達成できていないから、まず達成できそうな目標を選ぼう」ということも話していた。

 

子供はその時の状況によって毎日目標の設定を変えているし、そのたびにクラスの課題と向き合っている。そして朝の会で今日の目標を選んだ理由も話すため、クラスの中でも課題感が共有される。

集団としての課題感が強くなるため、子供たちはクラスを共同体として意識することができる。良い意味で子供たちが「うちのクラスは○○だよね」と語れているので、クラス意識は割と高い。

アップデートしよう

去年の運用を終えて

学級目標の運用という意味では、去年の実施は成功だった。形骸化せず毎日意識して活用することができた。今年度は持ち上がりクラスなので、同じ集団である。継続して運用していくためにアップデートすることにした。

それにしても”アップデート”という概念が定着したのは良いよね。「更新」とか「改善」より伝わりやすい気がする。

 

殿堂入りと廃棄

まず現在の目標でいらないものを選定した。選定は2つの基準で行った。

  • 既に目標にするまでもなく達成できている「殿堂入り」の目標
  • 何回やっても達成できない、実態と合っていない目標

各班ごとに話し合い・発表をして殿堂入りと必要ない目標を選定していく。手法がアナログで無駄に時間がかかってしまったのが失敗。

後から考えたら、Formsでアンケートを取るのが一番早かったなと後悔。その場合は、全目標の中で必要ないと思われるものを選択し、多かったものに関して再度検討という流れで良かった。

今回は、実態と合っていない目標は見当たらなかったが、殿堂入りが何個か出た。殿堂入りは別枠で掲示している。

 

目標の統合や追加

削る目標が終わったら、統合するものを考えた。あと追加する目標に関しても。追加目標に関しては、付箋にガンガン書き、貼っていく。

追加目標で特徴的だったのは「下級生に優しくする」内容が増えたこと。これは学年の始めの時に話したから、そのまま反映されたのだと思う。うーん、子供は素直。

 

その後、選定や統合を全体でやると大変そうなので、プロジェクトチームを発足した。要は実行委員なんだけど、プロジェクトチームの方がやる気が出るので、こちらの呼び名にしている。5人ほど集まったので、付箋の整理や目標文言の統合などをしてもらう。

1項目に対して行動目標の枠が8個しかないので、9個、10個あるところはプロジェクトチームと相談して削ったりした。でもこれもFormsでやればよかったし、早かったなーと後から後悔。項目ごとに行動目標を列挙して、必要な項目を選ばせれば良かった

 

完成とデータの引継ぎ

最後は担任が目標文言を打ち換え、拡大掲示を作って基本的に完成。

残る問題は、前の学年の達成度を引き継ぐかどうか。

毎日目標を達成すると、その目標にシールが貼られる。さらにその目標の項目にもシールが貼られる。例えば「友達に親切にする」という小目標を達成すると、「友達に親切にする」という部分と、中目標である「なかより・思いやり」の部分にもシールが貼られる。

そのため子供に与えた選択肢としては、以下の3つ。

  • 全部リセットする
  • 中目標のシールだけ引き継ぐ
  • 小目標・中目標のどちらのシールも引き継ぐ

これは多数決で、中目標のシールだけを引き継ぐに落ち着いた。ただし前年度と今年度でシールの色を分けるということになり、今年度の達成度は視覚化できるようになっている

 

アップデートを終えて

これでアップデート作業は終了。授業時間は2・5時間くらいでできた。1年間運用していくものだから、3時間くらいかけても良いなと思っている。

一連の流れを振り返ると、もっとFormsを使えば楽だったと思う場面が多かった。特に殿堂入りなどを考える場面はグダグダ感が溢れたから、そこはもっとスマートにできたな。

今年もどんどん運用してくぞー。