Twitterでこんなつぶやきを見付け、面白かったので拾ってきた。
ドリームマッチ面白いなあ。教員もたまにはびっくり人事年度があってもいいよな。毎年低学年のあの先生が高学年!いつも5656ばかりのあの先生が特別支援級!教務主任だった先生が担任に!みんなプロだからできないなんてことはないはず!
— ドラゴンボール教員A (@wakate_kyouyu) 2020年4月11日
人事は謎だし、結構悩む
以前の校長は人事で割と悩む人であった。
ここ最近は年齢もあってか決断力が落ちてきたように思え、人事はますます悩んでいる様子が見られた。
3月になると頼れるベテランの先生に何回も相談して、職員室での様子やそのベテランの先生の見立てを考慮した上で人事を決めていた。
職員室では、そのベテランの先生からこそっと聞いた情報が出回ったり、そもそも校長から来年度の人事の指名があったりで、発表までに人事予想で盛り上がる。3月は今年度の振り返りやら人事予想の話題で3回は飲みに行ける。
そもそも人事の決め方は校長によってかなり違う。
以前の校長は3学期の面談の際に来年度の希望を聞き、それと照らし合わせて人事を作っていくという形であった。
校長によっては希望などは全く聞かず、相談も無く3月25日にハイっといきなり出すケースもあるらしい。こわっ。
希望を聞いてくれるからと言って、もちろん希望が通るわけではない。
都合上、全く希望していないところに配置になる場合も多い。
そもそも誰も希望しない学年もあり、結局そこを誰かがやるしかないから、全員の希望を聞くのは無理なわけだ。
じゃあ希望が通りやすい人はどんな人かと言えば、こんな感じ。
- 校務の要職に就いている人
- 家庭的に配慮が必要な人
- ベテランの人
上の2項目は分かりやすいかもしれないが、ベテランの人はなぜ希望が通りやすいのか。
それは後半に述べるとして、びっくり人事をするとどうなるかを少し見ていきたい。
びっくり人事の良いケース
自分の後輩がびっくり人事になったケースである。
後輩は当時3年目の若手教員だった。
2年生でスタートし、次の年に1年生をもっていた。
若手ながら学級経営は上手く、2年間とも良い感じで終えることができた。
3年目に6年生の抜擢である。
経験が浅く、しかも1年生をやった次の年に6年生である。
発表時には職員室中で「おぉ…」と声が出たし、校長も苦笑いだったので、思惑は分からないが何か悩ましい決断があったようだ。
その年は本人の頑張りがあり、良い形で卒業生を送り出し、学級運営を終えることができた。
その後後輩は次の年から色々な部分でめきめきと頭角を現し、校内でも若手のエースになっていった。
びっくり人事の良くないケース
違うケースでは、主任クラスの女性の先生であった。
前年度が1年生でそのまま2年生に持ち上がると思われていたが、5年生に配置。
1学期の終わりくらいから少しずつクラスが落ち着かない雰囲気になっていき、2学期くらいからはどうにも崩れてしまった。
その先生も次の年はちゃんと良い学級経営をし、さらに次の年は卒業生を送り出していた。
2つのケースの差
2つのケースで何が違ったかと言えば、子供との相性と経験年数の2つではないか。
教員も人間なので児童との相性というものが必ずある。
その先生に合わない子がいる一方で、その先生とすごく合う子もいる。
高学年になってくると、今まで先生のやり方に慣れている部分があり、子供は自分との合う合わないが何となく分かってくるようだ。
そこで唐突にやり方が変化した時に、子供が対応できるかという問題がある。
どちらの先生も相性は悪くなかったと思うが、上手くいかなかったケースの時は子供との感性などが微妙にズレてしまったのが、修正できなかったのかなと思う。
2つ目が経験年数である。
教員は経験豊かな方が有利かと言えば、そうでもないことも多い。
特にびっくり人事の場合は、経験年数が多いベテランの方がダメージが大きい。
ベテランになってくると、良くも悪くも自分のやり方・スタイルができあがってくる。
給食とか掃除とか当番活動なんかは、まさにそれが出てくる。
逆に若手は経験値が無い分、まっさらな状態で対応する。
何か問題が起きると、体当たりでそれに対応していく。
しかも若手の方が往々にして時間が使える。
経験年数と自分の時間は少し関係があり、要は若手は自分のために使える時間が多く、中堅~ベテランになるといわゆる”子育て世代”になってくるので、使える時間が少なくなってくる。
上手くいったケースの後輩は、毎日かなり遅くまで残って教材研究をしていた。
上手くいかなったケースの先生も教材研究は熱心にしていたが、どうしても時間は足りなかったように思える。
ベテランにびっくり人事をされると、時間が少ない中で今までの自分を変革し再構築するという通常より大きなエネルギーが必要になる。
そういう意味では若手の方がびっくり人事に対応しやすい。
びっくり人事の弊害
仮に高学年を歴任しているベテラン主任のA先生を1年生の学年主任にしたらどうなるか。
結論は多分しっかりとできるが、大変になると思われる。
色々な人に聞いているが、流石にベテランと呼ばれる年頃になってくると、やったことが無い学年というのは無いようだ。
そのためベテランA先生の力量であれば、昔やった経験なども含め、1年生の担任をするのは可能だろう。
しかしA先生の疲労度は全く異なるものになる。
まず低学年と高学年では子供の発達段階が大きく異なるので、対応も全く違うものになり、これが負担になる。
日々の対応で少しずつ自分を修正しなくてはいけない。
また高学年を何回もやっていると、高学年の学習内容や教科と行事の関連性など1年間の流れがある程度把握できていたはず。
それが久しぶりの1年生では思い出しながらやらなくてはいけなくなる。
学年として何か抜けが出る可能性が高いし、学年の他の先生がそれをカバーリングできるかも分からない。
つまりA先生の個人的な負担は増えるし、学年運営が滞る可能性がある。
また高学年を何回もしていたということは、逆に言えば5年か6年のどちらかはA先生に任せておけばいいという流れがあったかもしれない。
A先生が抜けるので、学校としてその点をちゃんとケアしなくてはならない。
なので個人の点からも組織の点からも、特にベテランのびっくり人事は弊害の方が大きいような気がする。
組織から見たびっくり人事
A先生を例に考えても、組織から見るとびっくり人事はリスクでしかない。
円滑な運営をするならば、経験者を置いた方が全体としては圧倒的に良いはずだ。
じゃあ経験者だけを配置しておくとどうなるかと言えば、異動がネックになる。
その人も何年かすれば、異動でいなくなってしまう可能性が高い。
そのため変化させないのも実はリスクを負うことになる。
以前、1~4年まで同じ先生が担任をし、5年になったら突然崩れたケースがあった。
あれは5年の先生がというより、1~4年まで担任が変化しなかったので、子供のがそのやり方に慣れきってしまい、5年での変化についていけなかったというのが正しいだろう。
つまり理想的な運営としては、前任者が後任者と1度組んでから後任者に任せていくというのが一番だ。
よくあるのが半分だけ持ち上がりの先生で、半分は新しい先生のように。
そして教務主任とか校内組織の中心にあるようなところは、びっくり人事をするにはリスクが高い。
リスクの取り方
変化させることもリスク、させないこともリスクであるなら、どうしたらいいか。
ぶっちゃけ教員人事においては、すべてにリスクがある。
これは教員だけに限らないかもしれないが、まぁ教員の場合は1年ごとにそのリスクを背負う必要があるということで。
なのでリスクのコントロール、リスクの取り方が大事になってくる。
前述の2つのケースで共通していたことがある。
それは学年の他の学級が安定していて、学年としては安定していたことだ。
以前、一緒の組んでいた学年主任のクラスが荒れてしまったことがあった。
しかし他のクラスが安定していたので学年としては全く問題は無かった。
つまり組織においては、局所的にリスクをとり、全体の安定と新陳代謝を図るのが一番良いのであろう。
全体のバランスが大きく崩れてしまうようなリスクの取り方はマネジメント上、良くないし、個人にとっても良いものではない。
「びっくり」はするけれど「組織上何とかなる」というのが前提で組み立てないといけない。
若手の頃はこういうことはあまり考えなかったが、昔よりは学校全体のことが考えれるようになったんだなー。
自分はまだまだ中堅程度だから、そういうリスクの取られ方をするのかもしれない。