【教育】教員の評価観を理解すると、新任の先生に噛みつく人の心理が分かる【働き方】

先日も取り上げたが、近ごろ自分のTLで人気の先生がいる。

 

見た瞬間に思ったのは、「すげー。俺が新任の時は全然こんなこと思ってなかったなー」という感じであった。

吉野は二束三文で売られる平々凡々な教員なので、こんなに意識の高いことは考えておらず、毎日どうやって生き延びるかを必死に考えていた覚えがある。

 

ネット界隈なので、この人が本当に新任なのかはさておき、教員の業界で新任の先生に何を望んでいるのかなというのを少し考えてみた。

 

教員の仕事の優先順位

小学校教員の担任の仕事は、簡単に分けると3種類になる。

①学級 ②学年 ③学校の仕事の3種類である。

 

学級の仕事は、要は担任業。

普段の授業だったり、生活指導だったり、学級を運営するためにする仕事。

よく教員の仕事でイメージされるのも学級の仕事

 

学年の仕事は、自分の学年全体に関わる業務。

校外学習や行事の計画、学年便りの発行、会計業務とか、児童への指導というより事務的な業務が多い。

 

学校の仕事は、学校全体に関連する業務。これも、そのまんまだよ。

運動会とか行事の委員長とか、通知表の様式や時間割の調整とか、避難訓練の計画とか、どちらかと言えば直接児童に関わらない仕事が多い

 

じゃあ、この3種類の中で、学校において最も重要な業務は何か。

これの答えは学級の仕事だろう。

直接、児童に関わるので教員として疎かにしてはいけないところ。

 

じゃあ、この3種類の中で、最も優先度が高い業務は何か。

これの答えは学校の仕事

このあたりが教員以外の人や新任と、経験を積んだ教員の意識の違いがあるかもしれない。

 

学校の中で最も優先されるべき仕事は、学校の仕事

初任者の頃に先輩から言われたのが、「仕事は学校→学年→学級でやるべき。だってこれをやらないと学校が回らないから全体に迷惑がかかる。」ということ。

初任の時もこの話は納得したし、今でもそれは意識して仕事をしている。

 

評価観の違い

 

吉野は先輩から教えてもらったが、この仕事順は指導されなくてもぼんやりと分かってくる。

なので教員の中で業務的な評価ポイントは、学校の仕事を上手くしているかどうかになってくる。

 

逆に学級の仕事の優先順位はそんなに高くないため、荒れたクラスを立て直しているとか研究員とかで研究授業をたくさんやっているとか無い限り、そこまで評価は高くならない

担任同士で経営の仕方や実践について褒めたりしたりはするけどね。

 

この評価の仕方が、保護者や教員以外の人との評価観が少し違ってくるように思える。

特に保護者にとっては学級の仕事が一番だからね。当たり前だけど。

 

もっと言えば、吉野くらいの中堅どころになると、学級を通常に運営するのはごく普通のことであり、全く評価されることではなくなる。そりゃ、そうか。

 

「そんな評価のされ方は間違っている」「担任なんだから学級の仕事が最も評価されるべきだろう」という批判はよくあるが、現実的にはこうなんだよね。

 

例えば吉野は前任校では情報関係に強いからよく質問されたし、研究授業も結構やるし、行事の委員長もやった。

なので周りからの評価はそこそこ高かったけど、学級経営は上手くなかった

学級が崩れるほどでないなら、学年や学校の仕事をしている人は評価が落ち着くものだ。

  

がんばれ、新任

新任の先生もこの評価順で仕事を頑張る必要があるかと言うと、新任は全く異なる

学校が新任に求めることは、とにかく学級の仕事を完遂すること。それ以上は求めていない。

 

教員は専門業であり、いわゆるプロフェッショナルの仕事だ。免許も必要だしね。

新任であってもプロである。学級を通常通り回すことは当然業務として求められる

よく言われるのが「子供の前に立てば、新任であろうがベテランであろうが『先生』であり、そこに差は無い」というフレーズ。

 

しかし現実的に学級を普通に運営するのは死ぬほど大変である。

いつも思うんだけど、研修0で実地に放り出すってブラックそのものだよね。

因みに教育実習の経験は、現場の3日間で獲得できるレベルのことしかやれない

そもそも一番大切な学級の開き方とかやらないし。

 

そのため新任に求めることはただ一つ。1年間とにかく学級運営をやりきる

 

教員だけに限らないと思うが、新任の1年間はめちゃくちゃ長く感じる。

ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム喰らってるんじゃないかってくらい長い

 

そして1年間やり切ると「よく潰れなかったね!」なんて褒められることも。

この業界は、それくらい割とよく人が潰れる

新任は潰れず、1年間やり切れば万事OKである。

 

評価観のギャップ

こうなると新任の先生が噛みつかれる理由がだんだんと分かってくる。

  • 教員が主に評価するのは、学年や学校など全体に関わる仕事。学級の仕事はあまり評価されない。
  • 新任が頑張るのは学級の仕事

 

新任が頑張るのは基本的に学級の仕事。なので必然的に学級に関するアピールや発信が多くなる。

しかし新任が学級の仕事についてアピールしているのを見ると、評価に値しない仕事を、すげーアピールしてイキがっている視野の狭い若者にしか見えない。

そのため「現実見ろよ」「仕事はそればかりじゃない」という指摘が来る。

 

逆に、経験がある先生が同じ発言をした場合は、「この人は優先順位とか全部踏まえた上で、こういう発言なんだな」と勝手に理解してもらえるのでヨイショが入る。

 

若者はイキろう

若者が「視野が狭い」「仕事を分かっていない」と言われるのは、どこの業界でも同じだろう。

学校も同じであるが、詳しく見るとこの業界的には評価観の違いから上記の発言につながっていく。

 

とはいえ、イキった発言をするのは若者の特権だ

経験を重ねれば、嫌でも分かるものがあるし現実と合わせなくちゃいけない部分も出てくる。

これもどの業界でも一緒だね。

 

それに死ぬほど学級のことを考えらえるのは若いうちしかない

吉野くらいになってしまうと学級のことは考えるが、学年や学校のことを考えて行動しないといけない。

そうなると学級に手が回らないことも往々にしてある。

 

仕事順を教えてくれた先輩も

「委員長とかになるとそっちの仕事が多すぎて、学級に手が回らなくなることがあるんだよね。それって本末転倒でおかしいとは思っているんだけど。」

とも話していた。

吉野もどこかおかしいとは思いつつ、現実と折り合いをつけながらやっていた。

 

ただ新任のうちは学級を頑張って運営することが、最終的に学校のためになるから、やっぱり学級経営を熱心にやって、イキると良い

まぁ、それも3年目までだけどね。